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Kinoko3制作後記 第5話


中盤(4話~6話)のネタ回は、カオスな悪ノリっぷりがKinokoシリーズらしくて、結構気に入っている。
作った当時は、場繋ぎすぎたかもという不安で一杯だったが、制作後記のために改めてプレイしてみたら結構楽しめたのは、意外な発見だった。しかし、他人事に近い感覚で遊べるようになるまでこんなに時間が必要になるとは、Kinoko恐るべし。当時は本当にハマッてしまっていたのだなあ……。

第5話は、キャラクターの表示が「かまいたちの夜」のようなシルエットになり、なんちゃってサスペンスドラマ風になるという趣向。
「かまいたち」のパロディーが多く、知っている人にはクスッと笑えるネタが満載なのだが、知らないと「ふーん」な不親切設計である。窓のカーテンがバタバタと揺れるアニメーションとか、ヒロインの髪がズバーッ!とか、わりと忠実に元ネタのモーションを再現した画面演出は、かまいたちファンならばニヤリとする感じなのだが……かなり置いてきまくりだ。

そんなことをしながらも、ストーリーのほうでは割とシリアスな面にも触れていたりするのが、Kinoko的カオス。第5話の「JJ」の素性が、後半主人公が直面する試練の、最初の前振りとなる。
ギャグ回とシリアス回の住み分けを敢えてしない、というのがKinokoシリーズ通してのコンセプトではあるが、やはり相当ピーキーな珍味だと思う。オエッてなっても仕方がない。

そして、この話で最も手間がかかっているのは、3Dダンジョンのパートというのが、なんだかもう色々間違っている。
この話では、何故か後半に3Dダンジョンパートが挿入される。ネタ回を徹底的に悪ふざけで固めようとする頑張り、のような気もするがもの凄い空回りっぷりである。
3Dダンジョンなんて誰にも喜ばれないし、ほぼ出オチでもあるので、バージョンアップの際にスキップする選択肢が付いた(だったら最初から作るなという話しだが)。

まさに無駄。この無駄こそが、Kinoko3の「無駄てんこ盛り」たる所以である。
プレイヤーは、この辺りの上下左右に振られる感じを楽しめないと、ラストまでプレイ出来ないかもしれない(無駄に長いしね!)。

Kinoko3制作後記 第4話


第4話は作者にとって試練の回であった。
ある意味作品全体のクォリティを左右する、ターニングポイントとなった回でもある。
何故ならば連載版を公開してから一度、丸々作り直すということが起こったからだ。
よって、第4話には「没」と「真」の二つのバージョンが存在する(現在公開されているのは「真」のほう)。

没・第4話は大失敗であった。
つまらなかったのである。他の話もつまらねえよと言われると平謝りするしかないのだが、それにしても没・第4話は見るべき箇所が皆無だったのである。

Kinoko3の全体の構成は、大体以下のように考えられていた。

前半(1話~3話)…ストーリーの始動・各ヒロインの登場
中盤(4話~6話)…ネタ回・伏線張り
後半(7話~)…伏線回収・クライマックス

で、具体的に最初から内容が決まっていたのは、実は前半と後半だけで、中盤はぶっちゃけ何も決まっていなかったのである。
そして決まらないまま作業に突入したため、コンセプトのはっきりしない薄ぼんやりした回に仕上がってしまった。

一応、アニメなどでよくあるテコ入れっぽい南の島というシチュエーションで、それっぽいことを何もしない、というのが没・第4話のコンセプトではあったが、その通りに作った結果は「普通につまらない」である。当たり前か。
この没・第4話にはユーザからも身内からも「なにヌルいもん作ってんじゃい」と非難轟々。おかげ様で目を覚ますことが出来、真・第4話を作ることと相成ったわけである。
ありがたや。

真・第4話のコンセプトは「ミニゲームいっぱい」。
南の島が舞台なのは同じだが、そこで様々な訓練ミニゲームをすることで経験値稼ぎする、というもの。
このミニゲーム群をAVGエンジンであるNscripterで作るのはひたすら面倒だったのだが、この作り直しを経ることで、第4話をある程度生き返らせることが出来た。

そして、このことから「二度とヌルい回は作るまい」と心に誓うことが出来たのが、大きな収穫だった。
結局、中盤のことを何も決めていなかったのは、それまで中盤はわりとどうでもいいやとタカをくくっていたせいなのだ。そのナメた考えを改めるきっかけとなったという点で、第4話はKinoko3制作におけるターニングポイントと言えた。
本当に、御指摘下さった皆様には感謝の意に堪えない。そしてごめんなさい。
あと、没・第4話公開時いの一番に「ヌルい」というメッセージをくれた友人・悪戯海獺は強敵(とも)としか言いようがない。

そんなわけで考えを改めたは良いのだが、今度は力が変な方向に入ってしまい、なんだかおかしなことになってしまったのが、第5話(かまいたち編)、第6話(ギャルゲー編)である。
カオスを売りにするKinokoとしては、クォリティアップに繋がったと考えて、まあ良いのだろうが……。暴走開始、とも言える。


ここまで書いて気づきましたが、1話ずつ振り返って書くと後7話分もあるんですね。
自分で始めたのに、ちょっとつらくなってきました(笑)
しかしあとがきという名のお礼参り、最後までがんばります。

Kinoko3制作後記 第3話


第3話は、しいたけ怪人シイタの登場回。これまたヒロイン(??)なキャラクターだが、ストーリー分岐に関わる三人のうちの一人である。
Kinoko3は当初「嘘ギャルゲー」になる予定だったのだが、第1話を作った段階で既に見た目が全然足りていないことを思い知らされ、どうでもよくなってしまった。
嘘ギャルゲー的には、シイタは裏ヒロイン的な釣りキャラになるはずだったが、そのノリを放棄してしまったせいでなんだか宙ぶらりんな存在に。劇中でも太郎が「お前、なんか変じゃない?無理矢理作ってるってゆーか、キャラ定まってないってゆーか」とツッコミを入れているが、それは本当に定まっていなかったのである。
しかし、なんとなくストーリーに沿って勢いだけで描いていった結果、三人のヒロインの中で最もKinokoらしい、ヘタレた嫌キャラになった気はする。怪我の功名か。

シイタの相棒「ドウター」は、全キャラ中何故か一人だけフルボイス、というネタキャラだ。CVは、SMARTTALKという読み上げソフトの体験版なのだが、いざ製品版を買おうとしたら既に販売終了していてびっくり。既にある程度ボイスを作ってしまった後だったので、結局そのまま体験版を使うことに。体験版は男性ボイスのみしか使えないので、あの不気味な声で固定になってしまった。
ちなみに既存の選択肢にあるネーミング候補で人気なのは「チュパカブラ」。個人的には「マッチ(レーサー)」も好き。

第3話でストーリー的なポイントになるのは、やはり最後の選択肢で「手を払う」が正解なところだろう。なんというか、このスピリットが作品を通してのテーマともなっている気がする。作っていた時はあまり意識していなかったと思うが。
主人公・鶴見太郎は助太刀の手を振り払うことで飛行能力を得、戦士として一人前となる。それは、一人でシナリオ・スクリプト・グラフィック・サウンドを手掛ける無理・無茶・無謀を断行した、作者自身への叱咤激励だったのかもしれない。そうして見てみると、やはりKinoko3はメタ私小説なのだなあと思え、こっ恥ずかしい限りである。

Kinoko3制作後記 第2話


第2話の基本的な構成要素は、ヒロイン(?)の一人如月清菊の登場と、戦闘におけるエクストリーム攻撃の導入。

前回、1話目の生みの苦しみは特別であると書いたが、2話目には2話目の苦しみが待っている。というかそれ以降もなんやかんやで苦しいので、結局「特別」などというものは無いのかもしれない。

第2話のシナリオではまず、1話でひっくりかえった状況をある程度整理整頓しなければならない。面倒だ。しかも、この回から前作のキャラクターが多く登場するようになる。シリーズ全キャラクター総出演、という目標を立てたので当然だが、しかしこれもまた面倒くさい。
だが、キースや安岡などのKinokoキャラクターを出すことによって、なんとなくカンのようなものを取り戻すことは出来た。既に勝手に動くようになっているキャラクターというのは、作者にとっても心強い味方だ。奴らは「Kinokoらしさとは何ぞや」というようなことを作者に思い出させてくれた。
Kinokoを作るのに大事なのは「いい加減さ」である。それは「良い加減の脱力」とも言いかえられる。とりあえず肩の力を抜け、とKinokoキャラクター達は言っているように感じられた。
そういうこともあり、物語はかつてなく大変なことになっているにも関わらず、交通整理はかなり強引にさらりと済まさせて貰った。

新キャラクター、如月清菊はギタークラッシャーのパンク少女である。
当初清菊は敵として登場する予定だった。人でありながら妻科を襲う謎の敵、のような。しかしストーリー分岐を簡易化する都合上、分岐に関わるヒロインキャラを、絡ませづらいポジションに置くことが出来なかったので没となった。清菊の登場シーンとして最初に思い浮かんだのは、戦車を次々と破壊しながらギターを片手に歩いて来る、というものだったのだが、それが使えなくなったのはちょっと残念である。

戦闘でのエクストリーム攻撃のシステム回りは、第2話のシナリオと同時に作っていた。基本的に全て泥縄式であり、システムの拡張なども後付けである。よって、スクリプトは回を追うごとにどんどん汚くなるのであった。
前作「2」から導入された戦闘シーンだが、「3」ではシステムがより複雑になっており、これが労力的なコストを跳ね上げさせていた。タッグ戦の基本システムは立案を含め約一ヶ月で構築出来たが、その後もエクストリーム攻撃の実装、特殊演出効果の対応などで、最後の最後まで苦しめられるパートとなった。
第2話ではエクストリーム攻撃の他に、チュートリアルの作成もあったので、さらに地獄を見ることに。ゲームは分業で作るべき物だ。それは間違いない。

Kinoko3制作後記 第1話


連続モノの第1話を作る際の、産みの苦しみというのは特別だと思う。
第2話以降は、第1話で築いた土台を起点に、ある意味「第1話の真似」が出来るわけだが、手本が無い全くのゼロの状態からというのは本当にしんどい。

ノリさえ決まってしまえば後はこっちのもの、などとタカをくくっていたりもしたのだが、そのノリがなかなか定まらない。「3」はこれまでのシリーズよりもストーリー性が強く、従来のグダグダゆるゆるの脱力不条理コメディ路線との共存が難しくなっていたからだ。
ストーリー性は重視したい。だが、Kinokoらしさも捨てたくない。そんなジレンマを抱えつつ、第1話はおっかなびっくり作っていた。

もう一つ心配だったのが、曲制作について。
Kinokoシリーズは曲ありきで場面を作ることが多いので、主要曲のほとんどを序盤にまとめて作っておくのが通例となっていた。「3」でもそのスタイルを踏襲しようと考えていたのだが、果たして曲をコンスタントに書けるかどうか不安があった。これまで曲はなんとなく思い浮かぶままに作っていただけだったので、「なんとなく思い浮かばなかった時」はどうしようか、と。
しかし、幸いそれは杞憂に終わった。その不安を払拭してくれたのは初めに試しに作ってみた、シリーズのテーマのアレンジ曲だった。これを作った際に「いける」という妙な手応えを感じたのを覚えている。
それによって調子を掴み第1話制作の段階で、使用頻度の高い10曲程度を一気に仕上げることが出来た。しかし、その後最終的にジングルを含め60曲以上を作ることになろうとは夢にも思っていなかった。

主人公の御手洗神菜への告白シーンから始まる第1話。だが、もちろんその後の展開はラブコメになどはならない。それどころか、作者の思惑をも遥かに超えて脱線してゆくことになるのだ。
つづく!!

Kinoko3制作後記 準備


色々覚悟完了したところで、Kinoko3の制作開始とあいなった。大学卒業後の進路は、「バイトしながらKinokoを作る人」である。どうかしている。しかしそれが帝国華撃団、もとい、鉄鋼団なのです。

さて、Kinoko3制作において、まず始めに手をつけたのはシナリオのプロット立てやらキャラクターのデザインやらの下準備。流れとして当然のように思えるが、実は前作まではこれらの作業をほとんどすっ飛ばしていた。三度目の正直というか、そろそろその間違いに気づき始めていたので、「3」はそこそこ計画を立ててから実作業に入った。

シナリオのコンセプトはずばり、「Kinokoシリーズを壊しきる」である。最終作と決めたならば、これ以上続編を出すことが出来ないところまで木っ端微塵に破壊してやろうではないか、と。
それを実現する上で気をつけるべきことは、とにかく中途半端に陥らないようにすることだった。シリーズの総決算として内容を詰め込めるだけ詰め込んだ上で、きっちり壊しきることが肝要だ。
そこで、「1」「2」では労力の問題から採用しなかったマルチエンディングの要素を取り入れることにした。といっても共通したストーリーに沿いながら、終盤からオチにかけてメインに語られるキャラクターが変わるという程度のものだが、個人制作においてはかなりの冒険だった。作業量が文字通り倍増するわけで、ネタ系バッドエンド以外の純粋なストーリー分岐に関してはこれまで二の足を踏んでいたのだが、ここに来てついにそれを解禁。これが地獄への入り口だった。
そしてシリーズ全キャラクター総出演。これまでの全ての登場人物にオチをつけるというのが、もう一つの目標となった。

グラフィック面においては「大量生産」がデザインの指針だった。
「1」「2」では共に、労力の関係から「なるべく絵をケチる」という制作姿勢だったのだが、「3」ではそこを解禁。「絵をケチらない」である。
その為、大量に描くのに適したデザインと作業工程を模索しなくてはならなかった。それに質的にも、せめて前作よりはマシにしたい。
というわけで、「3」のアニメっぽい絵柄が出来上がった。

音楽面でも「全曲書き下ろし」を解禁。
「2」では、一部「1」の曲を使い回していた、というか初出がCDメディアだったので、同梱の「1」とCD-DAを共有する形になっていたのだが、「3」では全てオリジナル曲を使用することにした。
目標は使い回し無しで「2」の曲数17曲を上回ること。また、なるべくループせず、起承転結のはっきりした曲を多くしたいと考えた。


なんだか制作後記というよりメイキング・オブ・Kinokoになってきた感があるが、それもまたヨシ!この際全部振り返ってみることにする。

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